外国語活動で読み書きを扱わない理由

小学校の外国語活動では読み書きは扱いません。それはなぜでしょうか。
一つ目の理由は4技能を一度に始めることの難しさにあります。外国語活動必修化以前は、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を、中学校入学段階で一度に取り扱うことになっており、これには指導上の難しさ、生徒への負担が指摘されることもありました。
小学校でも4技能全てを取り扱うとなれば当然同じ問題が生じてきます。

  二つ目は外国語活動が年間35時間「しかない」という問題によるものです。中学校の英語の授業は年間140時間ですからその差は歴然です。
「小学校で音声に慣れ親しむ時間を削ってまで読み書きを学ぶ必要性があるのか」と問われれば「なかなか難しい」と言わざるを得ません。
最後は「正しさ(accuracy)」に関わる問題です。例えば、日常“It is a apple”という文法上間違っている発言を聞いても、意味は分かるので修正を促すことはあまりありません。しかし“It is a apple”と黒板に書かれているものを見ると、「aじゃなくてanだよ」と指摘したくなるのではないでしょうか。

  このように、文字は「正しさ(accuracy)」と関連しています。外国語科s津堂では、ある意味「多少間違ってもいいから知っている言葉やジェスチャーを使って意味のやりとりをする」ことが重要です。最初からあまり正しさに目が行き過ぎてしまうと、活発なコミュニケーションの妨げになってしまう可能性があります。
ただ、絵カードの下に文字を入れたりして児童の興味を喚起することは大事です。今、「初期の文字指導をどうするか」という資料を収集しています。
また別の機会に紹介したいと思います。
 

(September 2013)

中村先生のPROFILE

中村典生
長崎大学 教育学部教授

小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。

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