竹中龍範
香川大学教育学部教授
専門は、英語教育学。特に英語教育史、英学史、英語辞書史、並びに言語文化論を研究。日本英語教育史学会会長、日本英学史学会中国・四国支部長や、文部科学省の教育研究開発企画評価会議協力者などを務める。小学校英語教育についても、研究開発学校指定校直島小学校の運営指導委員などを務める。著書・論文多数。
我々が1日のうちに最も頻繁に目にするものの一つに、交通信号がありますが、イギリスでは交通信号は日本と同じようでありながら、実は異なっている点があります。これに気付いている人は多くないようです。
まずは、色の認識が異なります。英語では信号機の「青」はblueではなく、greenだと習っている人は少なくないでしょう。しかし、「黄」はどうでしょうか。イギリスでは交通信号の「黄」は一般的にamber(琥珀色)と捉えられています。英々辞典でtraffic light(s) をひくと、中にyellow、またはorangeとするものもありますが、多くはamberとしています。あるいは、amberを調べると、greenとredの間にともって注意を示す色と定義する辞書もあります。
色の認識の違い以上に日本人が気付かないことがあります。それは色がどのように変わるかです。これが見えているようで見えていない、まさに、異文化理解の盲点となっています。青(green)から黄(amber)、そして赤(red)と変わるところまでは日本と同じですが、その後、青に戻る前に赤と黄とが同時にともります(red with amber)。すなわち、片方の信号が黄色の時に、もう一方の信号は赤・黄となっているわけです。しばしば視界に入る交通信号のようなものほど、認識が無意識化してしまい、かえって気付かなくなっているよい例と言えますね。
イギリスに旅行、あるいは留学する機会があれば、是非これらの違いを体感してください。決して、色自体が違っていたり、信号機が故障していたりするわけではないのです。異文化を実体験する絶好の機会です。
(June 2013)
専門は、英語教育学。特に英語教育史、英学史、英語辞書史、並びに言語文化論を研究。日本英語教育史学会会長、日本英学史学会中国・四国支部長や、文部科学省の教育研究開発企画評価会議協力者などを務める。小学校英語教育についても、研究開発学校指定校直島小学校の運営指導委員などを務める。著書・論文多数。