竹中龍範
香川大学教育学部教授
専門は、英語教育学。特に英語教育史、英学史、英語辞書史、並びに言語文化論を研究。日本英語教育史学会会長、日本英学史学会中国・四国支部長や、文部科学省の教育研究開発企画評価会議協力者などを務める。小学校英語教育についても、研究開発学校指定校直島小学校の運営指導委員などを務める。著書・論文多数。
今から25年前になりますが、英国に留学中、知り合いになった経済学関係の日本人2人とウェールズにある古本屋村“Hay-on-Wye”を訪ねたときのことです。
到着した夜の食事をパブでとりました。「まずはビールを」とlagerを頼んだところ、「なぜ本物のイギリスのビールを飲まないのか」とそこの主人にaleを勧められ、これを注文しました。併せて、「何か食べるものはないか」と尋ねたら、「本日のおすすめでLancashire hotpotはどうか」との返事が。だいたい夜のパブではあまり食べるものがないので、これを頼むことになりました。
テーブルに着いてこのhotpotを一口食べた途端、3人が異口同音に「これ、肉じゃがだよ!」と叫んでしまいました。それからしばらくの間、本物のビールを片手にこの料理のことで盛り上がりました。一般的に、肉じゃがは、イギリスのビーフシチューをもとにしたもので、東郷平八郎が留学先のイギリスで食べてその味が忘れられず、帰国してからそれに近いものを作らせたと言われていますが、「その起源は絶対にこのLancashire hotpotだよね」ということで意見が一致しました。日本を懐かしく思ったことは言うまでもありません。
辞書の説明を見ると、「肉と玉ねぎとじゃがいものシチューで、通例、薄切りのじゃがいもの層で覆っている」とあります。「塩こしょうで味付けする」としているものもありますが、BBC Good Foodというウェブサイト(www.bbcgoodfood.com)からこのレシピをとるとウスターシャー・ソースを使うようになっています。あのときの肉じゃが(?)の味の決め手はこれだったのかもしれません。“Hay-on-Wye”とウスターシャーは近いのでその可能性が大です。ぜひこのレシピによるLancashire hotpotをお試しあれ。
(October 2013)
専門は、英語教育学。特に英語教育史、英学史、英語辞書史、並びに言語文化論を研究。日本英語教育史学会会長、日本英学史学会中国・四国支部長や、文部科学省の教育研究開発企画評価会議協力者などを務める。小学校英語教育についても、研究開発学校指定校直島小学校の運営指導委員などを務める。著書・論文多数。