竹中龍範
香川大学教育学部教授
専門は、英語教育学。特に英語教育史、英学史、英語辞書史、並びに言語文化論を研究。日本英語教育史学会会長、日本英学史学会中国・四国支部長や、文部科学省の教育研究開発企画評価会議協力者などを務める。小学校英語教育についても、研究開発学校指定校直島小学校の運営指導委員などを務める。著書・論文多数。
英国でホームステイをしている際に、ステイ先のおばさんと英語について時に面白い話をしました。ネイティブだから逆に気付きにくいこともあり、「なるほど、あなたの言う通りよね」と同意してくれたこともありました。
例えば、tomatoという語、これはイギリスでは「トマートウ」と発音しますが、アメリカ英語ではトメイトウだと話したところ、「あのつづりからどうしてそんな発音が出てくるの?」との返事が返ってきました。それで筆者が、「じゃあ、どうしてpotatoはポタートウと発音しないの?」と言うと、「そう、その通りね」と、今度は素直に認めてくれました。
標題中のKingdomも同様です。イギリスでは元首が国王か女王かで、国歌もGod Save the Kingか、God Save the Queenかに変わります。また、ロンドン塔向かいに係留されて王立海軍博物館として使われているHMS Belfastや政府刊行物発行所であるHMSOのHMは、略語では分かりませんが、His Majesty’sとHer Majesty’sの区別があります。それなのに、現女王の下、国名はthe United Kingdomのままで、なぜthe United Queendom, UQと改めないのでしょうか。
こんな話をおばさんにしたところ、「そんな単語がないからよ」の一言。それで筆者が「dukedom(公国)もあるし、queendomもあるでしょう」と辞書を調べて見せたところ、「なるほど、あなたの言う通りね。どうして変えないのかしら」と首をかしげていました。その後、筆者が帰国後に出したお礼状に対して返事が届きましたが、その封筒の裏を見ると、差出人住所の最後のところにUKと書いたのを二本線で消して、UQと書き直してありました。覚えてくれていたのです。
(February 2014)
専門は、英語教育学。特に英語教育史、英学史、英語辞書史、並びに言語文化論を研究。日本英語教育史学会会長、日本英学史学会中国・四国支部長や、文部科学省の教育研究開発企画評価会議協力者などを務める。小学校英語教育についても、研究開発学校指定校直島小学校の運営指導委員などを務める。著書・論文多数。