「かくれんぼ」隠れるのは何人?

明治時代、今の東大で教えていたイギリス人、J.M.Dixonが、日本人学生の弱点であるイディオムの辞書を編纂しました。このイギリス版がEnglish Idioms(1927)という標題で出版されていましたが、これを読んでいて次のような記述を見つけました。"Hide-and-seek is a children's game, in which one hides and the others try to find him, or vice versa."「かくれんぼは子どもの遊びで、1人が隠れ、それを他の子どもが見つけようとする、あるいは、その逆もある」ということで、「えっ?1人が隠れてそれをみんなが探す? これ逆じゃないの?」と思いました。おかしいと思い、これを元の日本版熟語辞典Dictionary of Idiomatic English Phrases(1887)で調べてみると、やはり同じように定義しており、しかも最後の"or vice versa"がないのです。

そのころの仕事仲間に英米人が2人ずついたので、これについて尋ねました。まず、朝一番にやって来たイギリス人2人に尋ねると、共に「1人が隠れてそれをみんなで探すのだ」との答え。ところが、そこにやって来たアメリカ人2人は、「みんなが隠れてそれを1人が探すのだ」という答えでした。これを聞いたイギリス人は、「それは逆だ、1人が隠れるんだ」と反論し、アメリカ人は「君らの遊び方はunfairだ」と言い返して、ひと騒ぎになりました。

その後、英々辞典で調べてみましたが、イギリスでは「1人、または数人が隠れて、それをみんなで探す」という遊び方が多いようです。

では、アメリカ式の遊び方で「鬼」は何というのでしょうか。基本語ですので、ぜひ調べてみてください。

(July 2013)

竹中先生のPROFILE

竹中龍範
香川大学教育学部教授

専門は、英語教育学。特に英語教育史、英学史、英語辞書史、並びに言語文化論を研究。日本英語教育史学会会長、日本英学史学会中国・四国支部長や、文部科学省の教育研究開発企画評価会議協力者などを務める。小学校英語教育についても、研究開発学校指定校直島小学校の運営指導委員などを務める。著書・論文多数。

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