大阪大学
短期語学研修でIELTSスコアを伸ばし
交換留学、グローバル企業就職へとつなぎたい
大阪大学
国際教育交流センター 近藤教授、大阪大学未来戦略機構特任教授 瀬戸山様、国際教育交流センター 宮本助教、国際交流オフィス学生交流推進課 辻係長
世界が大阪大学をめざすという環境づくりを
大阪大学では昨年より「大阪大学未来戦略(2012-2015)̶̶22世紀に輝く̶̶」を掲げ、「地域に生き世界に伸びる」をモットーに、平野俊夫総長のリーダーシップのもと、世界屈指の学問と教育の拠点として、高い倫理観を保持した優秀なグローバル人材を育成することをめざしています。なかでも、①海外研究者・研究機関との連携促進と、研究成果の世界への発信②国際社会で創造的・建設的に行動できる人材の育成③国際社会における共同研究コミュニティ構築による国際貢献④アジアを中心とする海外からの優秀な留学生の獲得と育成⑤上記の目的を達成するための国際交流関係拠点の再構築̶̶を国際交流戦略の重要課題に掲げています。
国際化拠点整備事業(グローバル30)の採択を受けて現在取り組んでいるのは、日本人学生と外国人留学生が、日本語と英語の双方を使って学習や研究に取り組み、シームレスな大学生活をおくれるグローバルキャンパスの実現です。そのため、海外の大学等との学術交流協定締結により、学生や研究者の受け入れと派遣のためのプログラムを充実させていきます。そして、できるだけ早期に学部における外国人留学生比率を10%へと引き上げ、創立100周年を迎える2031年には、世界で十指に数えられる総合大学として輝き、世界がめざす大学となるべく、学内の環境整備に努めています。
エセックス大学語学研修でIELTS受験
本学では留学生の送り出しについては、7月と10月の年2回募集する協定校への交換留学制度、長期休暇を利用したさまざまな短期語学研修や海外研修プログラムを用意しています。これらを利用して、年間約950名の学生が海外留学を経験しています。
交換留学では専門分野を英語で学ぶため、語学力の基準が高いですが、そのハードルを超えるためにも、国際教育交流センターでは、まずはイギリス・エセックス大学での夏季語学研修プログラムやオーストラリア・モナシュ大学での春季語学研修プログラムへの参加を呼びかけています。このプログラムは、異文化理解と英語運用能力の向上を目的とした5週間の研修です。特にエセックス大学のプログラムでは、交換留学に役立つアカデミックスキルを中心とした英語研修が行われます。近年、留学に係る語学力証明としてIELTSスコアを認める大学が広がり、本学の協定校もすべてがIELTSのスコアを認めています。
そこで、本学ではエセックス大学のプログラム参加者には、研修前と研修終盤にIELTS受験を義務づけています。留学の際には、概ね文系でIELTSスコア6.5以上、理系で6.0以上が要求されますが、2012年度は参加者40名のうち、6.0以上の取得者が、研修前10人(26%)から、研修後の現地受験では26人(65%)に達し、研修効果の高さが実証されました。さらに、参加者のうち7名が、帰国後に交換留学に応募し、内定を獲得しています。
IELTSの認知度が高まり受験者が急増
交換留学は、本学が学生交流協定を締結している欧米のほかアジアやオセアニア、南米などの協定校への留学です。毎年6月上旬に留学オリエンテーションを開催し、第I期は7月、第Ⅱ期は10月を締切としています。2007年に大阪外国語大学と統合したことから、留学希望者の多くは外国語学部の学生で、交換留学生の半数近くが非英語圏への留学を経験しています。
2011年度の交換留学申請者(大学間協定のみ)は105名でしたが、2012年度は140名に増えました。そのうち、IELTSスコアを利用した学生も2011年度の5名(5%)から、2012年度は30名(21%)へと急増しました。IELTSの学内実施は2012年度より導入しており、4月に事前説明会、6月に語学力に応じた対策講座を実施したうえで、7月及び9月に試験を実施しています。
学内実施の良さは、日頃から通い慣れた環境下で受験できることで、学生はリラックスして試験に臨むことができています。コンピューターを介さない記述式や対面式の試験形式であることも、学生にとっては受けやすい試験だと思います。また、別の検定で成績が伸び悩んでいた学生も、語学力を証明する試験の選択肢が一つ広がったと言えるでしょう。IELTSは集中的に対策を講じれば確実に結果を出せる試験。日本人になじみやすい試験形式で、対策をしながら海外の大学で必要とされるアカデミックスキルを習得することができると思います。
世界のどこでも活躍できるグローバルシチズンに
左から国際教育交流センター 近藤教授、大阪大学未来戦略機構特任教授 瀬戸山様、国際教育交流センター 宮本助教、国際交流オフィス学生交流推進課 辻係長
今後は学内でさらにIELTSを告知して、「短期語学研修でスコアを伸ばして交換留学へ」という流れをつくり、学生・キャリア支援課とも協力しながら、留学経験者のグローバル企業への就職へとつないでいきたいと考えています。
短期語学研修を経験した学生は、学習意欲が高まって交換留学を希望するようになり、さらに交換留学を経験すると視野が広がり、進路を自ら切り拓いていこうとする姿勢が見られるようになります。グローバル時代を生き抜くためにも、留学を通じてリスクを恐れずに挑戦していく姿勢を身につけ、グローバルシチズンとして世界のどこでも活躍できる人に成長してほしいと願っています。
プロフィール
大阪大学
幕末の蘭方医で蘭学者の緒方洪庵が塾主を務めた「適塾」を原点とし、1931(昭和6)年に医学部と理学部の2学部によって、わが国6番目の帝国大学として創設。現在は11学部16研究科5附置研究所を擁する総合大学として、吹田、豊中、箕面にキャンパスを構える。自由と進取の精神に基づく教育を伝統に、世界屈指の研究型総合大学をめざす。