東京都教育委員会
中学・高校の英語教師に3か月の海外派遣研修を実施
東京都教育庁
指導部高等学校教育指導課
米村 珠子 統括指導主事
渡辺 浩一 指導主事
最新の英語教授法を本場で学ぶ
東京都教育委員会では2014(平成26)年度から、中学・高校の外国語(英語)科教員を対象に、「外国語(英語)科教員海外派遣研修」を実施しています。都内の公立中学・高校に勤務する英語科の教員を選抜し、3か月間にわたって英語圏の国に派遣して、「使える英語」の指導に有効な最新の英語教授法を身に付け、同時に異文化理解を深めてもらおうという趣旨です。 平成26年度の派遣は2回にわたって行い、合わせて140名が参加しました。
日本の学校現場に即した専用プログラム
研修先は、英語教授法のプログラムをもつ英語圏の大学などですから、派遣が決まった先生方には事前に英語力を測定するテストを受けてもらいます。イギリスでは専らIELTSが使われていることから、英語圏のどこでも通用するよう、ここでは汎用性の高いIELTSを採用しました。このテストの結果を踏まえ、参加者はレベルごとに20名程度のグループに分かれて、研修を受けることになります。
研修先大学との間では、事前に十分時間をかけて協議を行っています。日本の中学や高校の英語の教科書、大学の英語の入試問題なども提供し、日本の英語教育の現状や、東京都が目指す方向性をよく理解してもらった上で、実効性の高い専用プログラムを組んでもらうのです。模擬授業も日本の教科書を使って行いますので、日本に戻ってからの応用も容易になります。平成26年度の研修では、コミュニカティブな英語の指導法は言うまでもなく、例えば発音指導のポイント、指導案の作り方、ティームティーチングの効果的な実践方法など、有益なスキルを多角的に学ぶプログラム内容となっています。
教員が変わり、生徒が変わる
研修に参加した教員たちからは、「生徒の発言を引き出すノウハウが学べた」という声が多く挙がっています。帰国後は、研修での経験を早速授業に生かし、グループワークやペアワークをふんだんに取り入れ、ICT(視聴覚機材)を積極的に使うなど、生徒自らが動き、楽しみ、自然と発話量が増えるような工夫を凝らした様々な実践例が報告されています。
実際に授業を参観すると、先生方が研修で得た手応えや自信を背景に、伸び伸びと指導している様子が顕著でした。子供たちも教員の変化を敏感に受け止め、生き生きと英語のコミュニケーションを楽しんでいます。高校の英語の授業は基本的に英語で行いますが、英語による説明が理解できない生徒がいれば、すぐに分かりやすい表現に言い換えて対応するなど、この点でも研修を経たことで、より自然で円滑な指導が可能になっているようです。
グローバル人材の教育に向けた多様な取組
東京都では平成27年度も、140名の教員を対象に海外派遣研修を実施します。また今後は、研修を受けた先生たちが情報を共有するための「場」作りや、研修成果を他の教員に普及するための仕組み作りなども、精力的に進めていく予定です。
生徒に「使える英語」を学んでもらうという観点では、平成27年度の夏を目途に、JETプログラムによる外国人指導者を200人体制に拡充。また、都内の公立高校全てに常駐ALTを配し、JET青年も現行の2倍以上に増やして、常に外国人が英語の授業に関われる体制を目指します。
今年4月には、都立国際高校において「国際バカロレアコース」がスタートしますし、小中高生が英語での生活や異文化を体験する「英語村(仮称)」構想、都立高校10校の「グローバル10」指定、多言語学習の推進、JICA(独立行政法人 国際協力機構)との連携による「東京グローバル・ユース・キャンプ」などにも、東京都では力を入れています。こうした小中高のグローバル人材育成の取組が大学レベルにまで広がって、力強く連携していくことに期待をしたいと思います。
プロフィール
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東京都の教育、生涯学習、文化、スポーツ等に関し、幅広い施策を展開している。「教育庁」はその事務局。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを一つの契機と捉え、国や都の政策と歩調を合わせながら、次世代に向けたグローバル人材の育成と、コミュニケーション重視型英語教育の推進に取り組んでいる。
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