東京大学

IELTSの受験結果を分析して

学生の英語力を把握し発信力を高める指導に生かす

東京大学
大学院総合文化研究科 言語情報科学専攻
板津 木綿子 准教授

受験対象者の幅を広げで

きるだけ多くの学生を海外へ送り出す

本学でIELTSの団体受験を導入して、5年が経ちました。初年度は1年生300名を対象としましたが、徐々に受験対象を増やし、2016年度より1・2年次の他に学部生全員と大学院生まで広げています。年4回の受験機会を設け、500名を対象としており、受験料1回25,380円のうち、大学が一部を負担し、学生は1万円を自己負担していました。

本学では、できるだけ多くの学生に海外へ出てほしいという目的のもとで、IELTSを導入しました。実際に受験している学生たちも、留学や海外の大学院進学に役立てたいという、明確な目標を設定し、何をすべきかわかっていると思います。本学はより一層の国際化を推進し、海外協定大学数も年々増加しています。語学研修から交換留学、専門性を高めるプログラム、海外インターンシップなど、短期から長期まで、幅広い機会を提供しています。

学生の発信力を高めるために

スピーキングクラス「FLOW」を開設

団体受験の成績を分析した結果、本学学生はリスニングやリーディングといった受信力が高い一方で、ライティングやスピーキングは平均的なスコアにとどまり、発信力が弱い傾向がみられました。そこで、すでに実施しているアカデミック・ライティングクラスのALESS・ ALESAに続き、2015年には1年生の必修科目として、7週間で1タームとするスピーキングクラス「FLOW」を開設。指導にあたる常勤教員も増やし、習熟度別の少人数授業を実現しました。授業ではさまざまなテーマについて、批判精神や探求する姿勢を持って議論・討議をします。学生の知的好奇心を引き出しつつ、英語での発信に慣れていない学生に自信をもってもらうことを目指したクラスです。履修後のアンケートでは、「今、自分が持つ英語力でどこまで話せるかが理解できた」「高校では受験対策が多く、やっとスピーキングの授業を受けられる」とFLOWを評価する声が多く寄せられました。

IELTSを通じて、学生は自身の英語力を把握し、学習意欲を高めています。本学には毎年3,000余名の学生が入学してきますが、当然ながら英語力に幅があります。今後は新学習指導要領のもとで英語を統合的に学び、4技能をバランスよく身につけた学生が入学してくることになります。そのためにもカリキュラムを見直し、内容言語統合型学習(CLIL)の要素を更に取り入れた授業展開などを考える必要が出てくると想像しています。

過去5年間で延べ2,100名余りがIELTSを受験しました。これまでも個々の学生の留学や就職など目的に応じたサポートをしてきました。学生の英語力をたえず把握し教材開発研究に役立てる姿勢が重要だと考えています。

プロフィール

東京大学

1877年に設立。駒場キャンパスでは主に教養課程、本郷キャンパスでは専門教育を行う。学部入学者は全員が6つの科類(文科一類、二類、三類、理科一類、二類、三類)に分かれて教養学部に所属し、2年間の前期課程を履修する。その後、教養学部を含む10学部に分かれて2年間の後期課程を履修する。現在、総長直轄の本部組織である国際本部を中心として、大学の国際化を推進している。