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コラム

「江藤友佳先生のビジネスで役立つ英語力アップのヒントと学習法」

第1回 効果的な英語学習方法 ~教材の活用法~

みなさん、こんにちは。
「通信講座や英語学習書籍をたくさん買うのですが、どう学習したら確実に英語力がつきますか」といったご相談を受けます。「この山積みの教材、どうしたらいいの?」と感じている方のために、教材活用法をご紹介します。

「英語が聞き取れない」「英語をいつまでたっても流暢に話せない」と苦手意識を持っている人が多いように感じます。語学学習は「聞く・話す・読む・書く」の4技能の力をバランスよく身に付けることが理想ですが、語学をものにするためには、まずはその音を声に出して真似ることから始まります。語学習得の基本はとにかく「覚えて使う」ことに尽きます。そして「覚える」とは、長期記憶に残る覚え方をすることです。そのためにも音源のついている教材を使うことをお勧めします。音源のついている教材を使えば、4技能のすべての力を付けていくことが可能です。

下準備

まずは音源を用意しておきましょう。中・上級者はナチュラルスピードの音源を活用しましょう。初級者は学習者向けのゆっくりした音源の教材を活用することをお勧めします。

最終目標

全ての文を覚えて同じように言える・書けるようになることを目指します。表現が多く含まれる教材であれば、数か月がかりになるかもしれませんが、基礎トレーニングを継続することで、教材で紹介されているすべての表現が自分のものになります。

トレーニング方法

<<PHASE 1>> Input
ものまねリピートで英語の音を覚える・真似て発話する

はじめに「毎日3つのパッセージ」や「1週間で1章」など、学習目標を決めて、文を音読しながら覚えていきましょう。教材によっては各章の最後に英文一覧があります。そのような「英語がまとめて記載されている場所」を中心に音読練習をし、トレーニングをするとよいでしょう。

STEP 1

まずは音源を聞かずに書かれているテキストを音読してみて、読めないところや語句の意味がわからないところに印をつけておきましょう。

STEP 2

次にテキストを見ながら音源を聞きます。特に印をつけたところは注意して聞き、場合によっては複数回聞いて音を覚えてください。覚えられそうになかったら聞こえたとおりにカタカナをふったり、自分ならではの記号を使ったりして音を覚えるためのメモを取るのもよいでしょう。

STEP 3

すべての単語がわかる(=読める)状態になったら、文単位で練習します。1文聞いたら止めて、音声と同じ発音やリズム、イントネーションで言えるよう「ものまねリピート」をしましょう。最初は音が早くてうまくいかないかもしれませんが、流暢に言えるようになるまで繰り返し音読しましょう。何度も1文を聞いて、止めて、同じように声に出して言うという作業を繰り返します。完璧に言えたら次の文に進みます。

STEP 4

全ての文をスラスラ言えるようになったら、スマートフォンやボイスレコーダーで自分の声を録音しましょう。録音したら、お手本音源の収録分数・秒数と比較して、大きな差異がないかを確認します。練習に用いている音源と比べて1.3倍以内にきれいに言えるように練習するといいでしょう。収録時間の目標をクリアしたら、自分の音声を聞いて、お手本音声と聞き比べます。音が違うと自分の耳で気づけるところは口や喉の開き方、舌の位置を微妙にずらしながら似た音が出せるようにがんばりましょう。

STEP 5

STEP 1-4の練習とは別日に、覚えた “はず” の文を文字に書き起こしてみましょう。長期記憶に残っているかを確認するには、少なくとも3日以上あけることをお勧めします。しばらく期間が空いていても正しく書き出せれば、自らアウトプットできるように覚えられた証です。

 

<<PHASE 2>> Output
書く・話す練習で表現の幅を広げる

PHASE 1で全ての英文のものまねリピートやその他トレーニングが終わったら、インプット作業が終了です。ここからは、自由自在にアウトプットをしていく練習です。索引がある書籍の場合は、索引を活用してください。

STEP 6

ここでは、江藤 (2021)の索引の文より活用例を紹介しましょう。
p. 311から索引があります。例えば、索引のBから始まる表現欄に “Before I start, let me ask you a question. How many of you have ~?” という表現が掲載されていますが、これはプレゼンテーションの冒頭部分で聞き手の興味関心を引いたり、どんなオーディエンスがいるのかを知るために役立つ表現です。上記 「~」の部分を埋めた文を、次のようにたくさん作ってみましょう。

  • How many of you have struggled learning a foreign language?
    外国語習得に苦労された人はどれくらいいるでしょう?)
  • How many of you have learned how to program in school?
    学校でプログラミングを学んだ人はどれくらいいるでしょう?)
  • How many of you have had difficulties with personal relationships at work?
    職場での人間関係に苦労した人はどれくらいいるでしょう?)
  • How many of you have wondered when we’ll see some flying cars?
    空飛ぶ車をいつ見られるのか考えたことがある人はどれくらいいるでしょう?)

このように、1つの表現を応用して多くのことを問いかけたり伝えたりすることができます。その際に参考にすべきは本編の内容の他に辞書の例文です。できるだけ多くの例文を調べて書き出していくことで自分の「英語貯金」がどんどん増えていきます。貯金がないと出すことができません。インプットしながらアウトプットをして、またインプットをして・・・のサイクルが、この例文作りだけでも可能になります。

STEP 7

自由に英文を作ったら、次は音声読み上げソフトを活用して自分の書いた文を読ませて発音を確認します。例えばhttps://www.readspeaker.com/のようなサイトを活用します。私はこのサイトのUS英語で読み上げる男性Jamesの声が気に入っています。気に入った声で自分の書いた文を読み上げさせて、音声で聞き、その発音を聞いてリピート練習とオーバーラッピング練習をしましょう。

*オーバーラッピング:文字を見ながら音声と同時に声に出して読む発音練習の方法

STEP 8

モデル音声と同時に言えるくらい発音練習をしたら、次は自分の書き出した例文をスマートフォンやGoogleドキュメントなどの文字書き起こし機能付きソフトを立ち上げて言ってみましょう。デバイスがきれいに文を書き出してくれたら自分の発音はOKということです。

 

まとめ

◆ Input

聞く⇒発音を真似て発話⇒覚える⇒発音チェック⇒暗記した文の文字化、覚えた文の応用ライティング

◆ Output

覚えた文を使って自由英作文⇒書いた文の音声確認⇒音声のリピートやオーバーラッピング(発音チェック)⇒デバイスによる音声と文字との一致確認(発話の書き起こし)

各教材に載っている英語表現を使ってこのサイクルを繰り返して練習しましょう。何度も繰り返すことで確実に力が付きます。

 

 

トレーニング期間中の気持ちの持ち方

一般的に、1つの教材にはとても多くの表現が含まれます。「こんなにたくさん覚えられない!」と感じるかもしれませんが、実は知っている表現が結構含まれているはずです。知っているところは省いて、「知らなかった表現」や「聞けばわかるけれども口にしたことのない表現」を中心に練習することをお勧めします。ストレスを感じてきたら、集中的に取り組む部分を自分で決めてストレスを軽減しましょう。

語学にはセンスというものはないと信じています。練習の質よりも量が重要です。継続して続けていれば、自分のものになります。Good luck!

参考文献: 江藤友佳 (2021年)『ロジカルに伝わる 英語プレゼンテーション』 クロスメディア・ランゲージ
参考ウェブサイト: ReadSpeaker

 

江藤 友佳(Eto Yuka)氏

Y.E.Dインターナショナル合同会社 CEO
英検通信教育教材「英語でビジネスコミュニケーション入門」監修・執筆者

クレアモントマッケナ大学卒業、コロンビア大学大学院Teachers College修士号取得(英語教授法)。大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。その後研修業界へ転職し、多くの教材制作や企業研修、教員研修を担当。楽天で社内公用語英語化に向けた社員教育に従事したのちに独立。現在は教材制作、企業研修、アドバイザリーサービスを提供している。
著書に 『ロジカルに伝わる 英語プレゼンテーション』、共著書に 『英語の数字ルールブック』(いずれもクロスメディア・ランゲージ)がある。

※所属・肩書きは掲載当時のものです。

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