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コラム

「江藤友佳先生のビジネスで役立つ英語力アップのヒントと学習法」

第4回 英文Eメール、適切に書けていますか? ~グローバルビジネス必須のEメールの書き方を見直そう~

今では国内外を問わず、Eメール(以下、メールと表記)はビジネスコミュニケーションにおいて外すことのできない媒体となっていますね。皆さんはそのコミュニケーションツールを日々使っていると思いますが、英語でメールのやりとりをする時、英語をうまく使いこなせていますか。ビジネスコンサルタントとして勤務していた時やグローバル人事部に在籍していた時に、海外に送信する英文メールの添削を依頼される機会が多かったのですが、日本語を直訳した英文を見て違和感を覚えることがありました。今回は読み手に負担をかけないスッキリとした英文メールを書くコツを大きく3つに分けてお伝えします。

英文メールの正しい見た目を意識する

メールは言わずもがな電子版の手紙です。通常の手紙に型があるように、メールにも型があります。型があるおかげで読み手は速読ができます。個人的なメールは別として、ビジネスメールでオリジナリティを発揮しないでください。特に英語の場合は決められた型に則って書きましょう。

基本的な文章の流れは以下の図のとおりです。

『~マインドセットからはじめる~ 英語でビジネスコミュニケーション入門』p. 107より

パターン化されているメールの型の中から適切なものを選択し、キーワードだけを自分の目的に合わせて変更するのもよいでしょう。さまざまな型はインターネット検索をすればたくさん提示されています。「問い合わせをする」「サンプルを取り寄せる」など自分の目的にあったテンプレートを探してください。


英文メールを書くときの要注意事項

◆ 文の途中で改行しない

英文メールでは文の途中で改行してはいけません。
日本人が書く英文メールで海外の人がよく困惑するのが、英文が文の途中で改行されていること。日本語のメールでは、読む際に目で追いやすいようにアイスパン( eye span )を考慮し、受信者が読みやすいように意味が区切られるところや視覚的にまとまりのよいところで改行を入れるのが暗黙のルールのようになっています。しかし、このルールは日本特有で、英語に限らず他の言語では該当しない異例なものです。文の途中で改行する日本の習慣は、多くの海外の人にとって馴染みのないものです。馴染みがないので逆に読みにくいと考えられており、非常に不親切になってしまいます。英文で書くメールは英文のルールに基づいて書きましょう。

◆ カンマを適切に使う

英文を作成する時、よく迷うのがカンマの使い方ではないでしょうか。英文添削の際にもカンマの有無や場所を理解できていないビジネスパーソンの英文をよく目にします。教養のあるビジネスパーソンとして、最低限知っておくべき英文の書き方ルールとしてカンマの正しい使い方を把握しておきましょう。以下にカンマを打つ正しい場所を挙げます。

● 接続詞の前

文と文をつなぐ接続詞があるときはカンマが必要です。このカンマを忘れている人が非常に多いので、注意しましょう。特によく使う and, but, so の前にカンマを打つことを習慣化しましょう。

例: I can’t attend the meeting tomorrow, so Emi will attend on my behalf.
(私は明日の会議に出られませんので、エミが私の代わりに出ます)

● 句や節のあと

文節と文節の区切り、特に、文節ごと文頭に動かされた情報のあとにはカンマが必要です。

例: On Sunday, we will have our semi-annual office maintenance.
(日曜に半年に一度のオフィスメンテナンスを行います)

● 付加情報を挿入するとき(関係代名詞の非制限用法)

前述したことを説明するために前後にカンマを加えて付加情報を文に挿入することができます。カンマで挟まれた箇所を抜いても文が成立するのが特徴です。例えば、次の例ではカンマの間を抜くと The new plan got approved by the management. となり、意味を成します。

例: The new plan, which cut the cost by 20%, got approved by the management.
(コストを20%カットした新計画は経営陣に承認されました)

● 接続副詞のあと

文の冒頭にくる接続副詞の後には必ずカンマが必要です。

例: I’ll be on a business trip. However, I’ll be joining our weekly meeting online.
(出張に出ていますが、週次会議はオンラインで参加します)

● 複数のものを列記する時

何かを列挙するときは A, B, and Cのような形でカンマを打ちます。andの前のカンマを付ける表記方法と付けない表記方法があり、and の前のカンマは Oxford comma と呼ばれています。カンマの有無で文の意味が変わることがあるため、私は必ずこの Oxford comma を入れており、研修でも推奨しています。下記の例文で、意味の違いはわかりますか。

例:

  • ■ Oxford commaなし
    He attended the meeting with his business partner, a manager and an engineer.
  • ■ Oxford commaあり
    He attended the meeting with his business partner, a manager, and an engineer.

Oxford comma なしの場合、a manager and an engineer の前に who is が省略されていると考えられ、a manager and an engineer は「マネージャーでありエンジニアでもあるビジネスパートナー」一人の人のことだとも理解できます。つまりこの会議の参加者は he が差す人物と business partner の2名であるとも取れます。

一方 Oxford comma ありの場合は、he が差す人物のほかに会議に参加した人物はビジネスパートナー、マネージャー、そしてエンジニアの3名であることが明確に示され、会議は4人で行われたことになります。このようにカンマの有無で文の意味が変わってしまうリスクがあるため、複数のものを列記するときには and の前に Oxford comma を入れて、すべてのものを区切ったほうがいいと言えます。

● 日付の書き方

メールで日付を書くことは多いものです。その際に必要なカンマを打ち忘れないように注意が必要です。日付は読みあげるようには書かず、数字だけを書くのが一般的です。日本式に英文でも日付のあとに括弧書きで曜日を書く人がいますが、その書き方はスタンダードではありません。

〇良い例: Fri., Feb. 25, 2022      
×悪い例: Feb. 25th (Fri.), 2022

 


受信者にとって読みやすいメールを作成するヒント

忙しいときに長文のメールが届くと「あとでじっくり読もう」と思われ、対応を後回しにされがちです。英語ではその性質上、複数の音を一文字で表す漢字のような表記方式がないため、文が長くなります。そのため、いかに短く的確に要件を伝えるかを考え、工夫する必要があります。

工夫1 無駄なことは書かない

日本語のメールで必要とされる「いつもお世話になっております。」のような導入文は不要です。代わりに I’m writing to ask about....(~について質問するためにご連絡しています)といった連絡目的を単刀直入に書きましょう。

工夫2 箇条書きで書く

英語が苦手であればあるほど、長文を書くことはミスコミュニケーションのリスクを伴います。例えば取引相手に条件を伝えないといけない場合、文章ですべてを書き出すと、単語の選定ミスや文法ミスにより正しく内容が伝わらなかったり、逆にテンプレートから引用した仰々しい内容になってしまったりすることがあります。例えば契約書であれば、「契約期限」「金額」「本契約でできること」「特記事項」など項目別に箇条書きにしていけば、複雑な文を組み立てる負荷が減ります。ミスコミュニケーションを回避するためにも、重要なことこそ箇条書きのシンプルな構成で情報を整理しましょう。

 


工夫3 メールで対応するか対面にするかを見極める

実はメールで何回もやり取りするのは大変です。文字でコミュニケーションを取るメールでは英文の高い精度が求められます。そのため場合によっては打ち合わせを設定して、口頭で確認するほうが効率よいことがあります。所属する組織の文化にもよりますが、多くの場合、会議で討議された内容について後で確認メモをメールで送付すれば十分であり、何往復ものメールでのやり取りよりもすっきりした内容にまとめることができます。

ビジネスの内容や目的に応じて、メール上でやり取りをするか対面やリモート会議等、直接話をするか、どちらが適しているかご自身の負担も考慮し適宜判断しましょう。

 

以上、英文メール作成上の注意点を挙げました。これらのコツを頭の片隅におき、誤解のない英語を使い、グローバルにビジネスを推し進めてください!

 

江藤 友佳(Eto Yuka)氏

Y.E.Dインターナショナル合同会社 CEO
英検通信教育教材「英語でビジネスコミュニケーション入門」監修・執筆者

クレアモントマッケナ大学卒業、コロンビア大学大学院Teachers College修士号取得(英語教授法)。大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。その後研修業界へ転職し、多くの教材制作や企業研修、教員研修を担当。楽天で社内公用語英語化に向けた社員教育に従事したのちに独立。現在は教材制作、企業研修、アドバイザリーサービスを提供している。
著書に 『ロジカルに伝わる 英語プレゼンテーション』、共著書に 『英語の数字ルールブック』(いずれもクロスメディア・ランゲージ)がある。

※所属・肩書きは掲載当時のものです。

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